糖質制限食の実際

 

糖質オフの始め方

無理なく糖質オフを始め、続ける方法についてのお話しです。

 

前提として次の点を念頭に置くとよいでしょう。

 

1. 糖質を摂るたびに、身体の中で血糖値のスパイク(急上昇→急下降)が起きていること。

 

2. 血糖値のスパイクは血管を徐々に傷つけ、様々な病気の原因となること。

 

3. 糖質には強い依存性が認められること。

 

そして、糖質制限食の実践にあたり、以下に留意しましょう。

 

・無理にガマンしてもストレスが溜まり、リバウンドするだけです。徐々に慣らしていきましょう。

 

・全体的なエネルギー不足、必須栄養素の不足に注意。体調不良のもととなります。

 

「糖質をガマンする」のではなく、「糖質摂取は必要ない」ことを少しずつ身体に教えてあげるとよいでしょう。

 

現代に生きる私たちは、物心ついた頃から当たり前のものとして糖質を大量に摂取してきましたので、いきなり全部抜くと精神的に辛かったり、身体に不調が出ることも考えられます。

 

少しずつ無理なく「美味しく楽しく糖質制限」を心がけましょう。

1. 基礎知識編

 

糖質制限とは、糖質を多く含む食品を食べないか、食べる場合はごく少量にするだけのことですので、特に難しく考えることはありません。

 

1-1. 糖質の多い主な食品:

 

・砂糖、砂糖を多く使った食品: 菓子、ジュース、煮物など加工(調理)品、ソースやたれ類

 

・でんぷんを多く含む食品: 穀物(米、パスタ、パン、うどん等)、イモ類、根菜類(カボチャ、ニンジンなど)、春雨など

 

・果物: 少量なら可。特にバナナは糖質が多いので注意。ドライフルーツはとても糖質が多いです。

 

ダメなものがたくさんあるように見えますが、簡単に言えば「主食系とイモ、甘いもの(菓子とジュースは口)にしない」ということです。

 

1-2. 甘味料について

 

・天然甘味料:

 

ブドウ糖、ハチミツ、ココナッツシュガー、メープルシロップ、アガペシロップ等は全て食後高血糖を招きます。これらの中には「低GI」を謳うものもありますが、実際の食後血糖値上昇は砂糖と大差ありません。

 

・糖アルコール:

 

自然界に存在する糖質で、甘味料として生産されています。エリスリトール、キシリトール、マルチトールなどが一般的なものです。個人差はあるようですが、マルチトールはある程度血糖値を上昇させるようなので要注意です。

 

・合成甘味料:

 

自然の食品中に存在しない甘味成分で、化学的に合成されたものです。アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース等があります。血糖値を上昇させませんが、安全性について議論になっており、摂取許容量が定められているものもあります。少量摂取なら神経質になる必要はないと思われますが、気になる方は避けるとよいでしょう。

 

1-3. 飲料について

 

水、無糖のお茶、コーヒー、炭酸水などはいくら飲んでも問題ありません。

 

砂糖や果糖ブドウ糖液糖が大量に入っている清涼飲料水の殆ど、缶コーヒー、ペットボトルの紅茶などは避けましょう。

 

糖質量は多くはないものの、つい多量に飲んでしまいがちな牛乳は要注意です。

 

同じく、ビールや日本酒もグラス一杯程度なら問題ありませんが、少量で済ませられないケースが多いと思われますので避ける方がよいでしょう。

 

1-4 脂質について

 

糖質の摂取が減る分、脂質・タンパク質の摂取量が増えることになります。脂質のカロリーはあまり気にする必要はありませんが、注意すべき脂質もあります。

 

・積極的に摂るべきもの:オリーブオイル、えごま油、亜麻仁油、ラード、バターなど

 

・過剰摂取に注意するべきもの:サラダ油、マーガリンなど

 

特にトランス脂肪酸を多く含むマーガリン(を使用したパンやスイーツなど)はできるだけ控えた方がよいと思われます。

 

2. 実践編

 

2-1 糖質制限の始め方

 

1. おやつを食べる習慣がある場合

 

スナック菓子や甘いものを日常的に食べたり、甘い飲み物を飲む習慣があると、肥満したり、将来糖尿になるリスクは高いと言えます。まずはここから糖質を徐々に抜いていきましょう。

 

スイーツやスナック菓子の主原料は高糖質食品の代表格、小麦粉、イモ、トウモロコシなどです。砂糖や果糖ブドウ糖液糖が入っているものも多いです。

 

これらのおやつを低糖質なものに変えましょう。ナッツ、チーズ、ゆで玉子等はコンビニ等でも一般的に置かれているので便利なおやつとなります。

 

どうしても甘いものが食べたい場合は、やや高価ですが市販の低糖質スイーツを利用するか、エリスリトール(甘味料)を使って自分で作りましょう。

 

2.  三食ともしっかり主食を食べる人

 

おやつを食べるかどうかは別として、三食しっかり主食(パン・ご飯・パスタ・うどん・そば等)を食べる方は多いでしょう。

 

運動(活動)量の非常に多い人ならともかく、血糖値スパイクを一日最低三度も生じさせる食生活は、現代人の多くにとって悪しき習慣と言えます。

 

少しずつでも、糖質からの脱却を目指しましょう。

 

(A) プチ糖質制限

 

朝昼晩の内一食から糖質を抜いてみましょう。一般的には夕食が一番抜きやすいと考えられますが、ライフスタイルに合わせて選択して下さい。

 

例えば、朝あまり食欲がない方は朝食から糖質を抜きやすいでしょうし、昼食後の眠気がひどい方は昼に抜いてしまうのも手です。

 

ポイントは、

 

・糖質を抜く分、脂質とタンパク質を増やす(肉、魚、油脂類、玉子など)

 

・最初は食べる量を多めに。満足するまで食べてみましょう。

 

・1-2週間続行して食欲や体調の変化をチェックします。

 

これで、

 

・体重増加→食べる量を抑えるか、他の二食から糖質を少し減らす。

 

・体重維持または減少→続行し、「糖質なしでも平気」な状態に身体を慣れさせる。

 

糖尿(境界型含む)がない方はこのまま続けてもよいでしょう。

 

さらに糖質量を減らしたい場合は、

 

(B) スタンダード糖質制限

 

同じくどの食事でも構いません。もう一食から糖質を追放してみましょう。

 

ポイントはプチ制限と同じです。初めは満足するくらいしっかり食べ、体重を体重を測りながら食べる内容や量を調節します。

 

基本的にカロリーは考えなくて構いませんが、あまりにも大食ですと体重増加もありえます。体重はこまめに測りましょう。

 

あまり神経質にならず、様子見のつもりで1-2週間続けてみます。

 

(C) スーパー糖質制限

 

プチまたはスタンダードを試して、問題がないようでしたら、三食全てから糖質を抜いてしまいます。

 

一日を通して、甘いもの、主食系は一切摂りません。それでも野菜や調味料などに多少の糖質は含まれているので、一食あたり20g以下程度の糖質摂取になることが多いです。

 

どうしても主食系や甘いものが食べたい場合は、市販の低糖質スイーツ、大豆パンなどを活用しましょう。

 

2週間ほど続けていると、満腹まで食べなくても満足できるようになりますし、また空腹感を感じにくくなってくるはずです。

 

糖質依存も軽減し、甘いものへの強い欲求は徐々に薄れるでしょう。

 

2-2 糖質制限食の注意点

 

糖質制限を実行する上で重要なポイントをまとめておきます。

 

1. エネルギー不足にならないよう注意

 

たとえばこれまで普通に「ご飯+おかず」等を食べて特に体重が減らなかった方が、そこから「ご飯」を抜くと、当然その分の摂取エネルギーが減ることになります。

 

身体が必要としているエネルギー量よりも、総摂取エネルギー量が低い状態が続けば、エネルギー不足となり、低栄養状態になります。

 

食べる量や必要なエネルギー量は個人差が大きいので一概には言えませんが、低栄養状態が続くと、一般的な「無理なダイエット」と同じく、筋力や集中力の低下、精神状態の不安定、女性の場合は生理不順などを招く可能性があります。

 

特に導入期では、食事から糖質を抜く分、タンパク質、脂質を多めに摂取するよう心がけて下さい。

 

まずはこれまでの食事と同程度のカロリーか、高カロリーになるよう調整して下さい。カロリー計算は特に必要ありませんが、「食べ過ぎかな」と思えるくらいで構いません。

 

糖質を減らせば太りにくくなるので、カロリーは基本的に気にしなくて大丈夫です。

 

高タンパク、高脂質、低糖質で十分なエネルギーを摂りながら身体を慣らしていって下さい。

 

2. 必須栄養素の不足に注意

 

糖質制限食を、「好きなものだけ食べていればよい」ことだと誤解される方の中には、例えば肉しか食べない等の栄養素的に偏った食生活を始める方もいます。

 

糖質制限食は「糖質だけを抜く」ものですので、他の栄養素は様々な食品から満遍なく摂らなければなりません。

 

ビタミン・ミネラルなどの微量(必須)栄養素の中には、不足が続くすると深刻な病気につながるものもあります。

 

上記の総エネルギー不足に加え、各種ビタミン・ミネラル類の不足にも注意が必要です。

 

3. 油脂を多めに摂りましょう

 

上記1-2とも関連しますが、細胞膜の原料であり、かつ人体の主要なエネルギー源である脂質が不足しないよう、良質の油脂をたっぷりと摂るようにして下さい。

 

オリーブオイルやココナツオイルなどのなるべく自然なものを選択します。動物性脂肪も決して悪くありません。バター、ラードなども活用しましょう。

 

4.お腹の調子を整えましょう

 

糖質制限を始めてから便通に問題が出てきたという方も珍しくありません。食生活の変化に伴う腸内細菌叢の変化、水分の過剰または不足、お酒の飲み過ぎ、食物繊維の不足など、様々な要因があると考えられます。

 

一般論としては、食物繊維や発酵食品など、腸内環境を整える効果を持つ食品を多めに摂るようにすればよいでしょう。

 

2-3 糖質制限を楽に続けるために

 

慣れると簡単に実行できる糖質制限ですが、最初は

 

  • 何を食べればよいか分からない

  • どうしてもカロリーが気になって脂質の多いものを食べるのに抵抗がある

  • 食べてもなかなか満足感を得られない

 

等、とまどうこともあるかと思います。

 

ここでは、糖質制限に楽に馴染んで、楽しく続ける方法を見ていきましょう。

 

1. スープの活用

 

具だくさんの汁ものを食事に採りいれると、多様な栄養がとれますし、満足感が得られやすいです。白菜、豆腐とわかめ、牛肉細切れと大根、魚介類、卵などなど、工夫次第で手軽に色々な味が楽しめます。和洋中、味のバリエーションも付けやすいので飽きがこない点もいいところです。

 

市販のコーンポタージュは糖質が多そうに思えますが、意外にも100gあたり8-10g程度です。これくらいでしたら許容範囲内にもできます。

 

春雨スープはヘルシーなイメージがありますが、春雨にはデンプンが多く含まれるので要注意です。

 

また、鍋物や酒蒸しなども簡単に様々な食品を採り入れることができる便利な料理です。

 

酒蒸しに使う日本酒には糖質が含まれていますが、100cc中5g程度ですので、調理に使う分にはあまり気にする必要はないでしょう。

 

2. 葉菜サラダとオイルドレッシング

 

葉もの野菜は糖質が少なく、食物繊維や微量栄養素に富んだものが多いので、積極的に摂りたいものです。

 

ドレッシングを工夫すれば美味しく食べられます。市販のドレッシングは砂糖や果糖ブドウ糖液糖が多く添加されているものもあるので、購入の際は栄養成分をチェックしましょう。

 

3. チーズ、ナッツ

 

小腹が空いた時や、晩酌のおつまみとしてとても便利ですし、栄養も豊富です。ナッツは種類によって糖質量が異なりますが、基本的に低糖質なので食べ過ぎなければ大丈夫です。ミックスナッツを購入する際は、(ジャイアント)コーンが含まれているものや、甘い味付けがされているものは注意しましょう。

 

4. 豆腐は万能

 

日本の伝統食品である豆腐やお揚げ、納豆はとても優れた糖質オフ食品です。これらを使いこなせると料理の幅がグンと広がりますし、お腹も満足です。

 

豆腐はそのままでも湯豆腐でも美味しく食べられますし、揚げもの、炒めもの、煮ものなど何にでも使えます。中華風や洋風料理にも使えますので、糖質制限の強い味方となるでしょう。

 

お揚げも同様です。和食の調理法はたくさんありますし、ピザ生地の代わりにしたり、中にチーズやソーセージなどお好みの具を挟んで調理すると美味しい料理がたくさん作れます。

 

5. 豚肉、鶏肉、卵は強い味方

 

肉類は全て糖質制限OK食品です。比較的安価かつ入手が容易な豚肉、鶏肉、卵はタンパク質と脂質に富んでおり、また調理方法も多くあるので非常に助かります。

 

6. 揚げ物

 

高カロリー食品の代表格的な扱いを受けている揚げものですが、糖質制限食では特に避けるべきものではありません。

 

揚げものの衣は小麦粉ですので摂りすぎ注意ではあります。衣の薄いものや、唐揚げ程度でしたらそれほど神経質にならなくても大丈夫です。

 

自宅で作る場合は、衣に大豆粉やおから、砕いた高野豆腐などを活用すればよいでしょう。

 

7.未精製穀物の利用

 

全ての食事から糖質を抜くことができない場合や、1日1-2度は主食系が食べたい方は、(発芽)玄米、雑穀類、全粒粉の小麦粉など、未精製の穀物を食べるようにしましょう。

 

糖質量や食後血糖値のスパイクは精製されたものと殆ど変わりません。微量栄養素は比較的多く含まれているので、同じ摂るならこちらの方がまだましと言えます。

 

また、古代米などもち米の玄米は少量で満腹しやすくなる傾向があるようです。このようなものも有効利用するとよいでしょう。

 

8. 低糖調味料や「もどき」食品も賢く利用

 

幸いなことに、現在はたくさんの低糖質調味料や菓子、また小麦粉を使わないパンやご飯もどきも数多く販売されています。

 

味や食感の面で、従来品とそん色のないものもありますので、満足できると思います。

 

通販が主体ですが、糖質制限に対応している店舗も徐々に増えてきつつあります。これらの商品も上手に使いこなしましょう。

 

ご注意下さい!

【糖質制限の適応外】

  • 診断基準を満たす膵炎がある方

  • 肝硬変がある方

  • 長鎖脂肪酸代謝異常症の方

【注意が必要な方】

  • 経口血糖降下剤の内服やインスリン注射をしている方

  • 機能性低血糖かつ糖質依存レベルの高い方

  • 糖尿病腎症第3期以降で、eGFRが60ml/分未満の方

糖質制限食の第一人者

(C) 一般社団法人 日本糖質制限医療推進協会 2015