糖質制限食について 1

 

「血糖値」と「糖尿病」の基本

はじめに

 

 

「糖質制限食」とは、1999年より(一財)高雄病院(京都市右京区)において導入されている糖尿病の食事療法です。

 

糖尿病の合併症予防、メタボリック・シンドローム、生活習慣病の改善はもとより、減量、美容、健康改善にも大きな効果を上げています。

 

ここでは、糖質制限食の基本的な考え方について説明いたします。より詳しい情報は「学びの部屋」をご参照下さい。

 

糖質制限食を正しく理解するためには、前提として「血糖値」と「糖尿病」についての知識が必要です。まずはこれらについてご説明します。

 

 

糖尿病の基本1 まずは血糖値について     

 

 

◆1-1 血糖値とは

 

ご飯、パン、パスタ、うどん、蕎麦、イモ類などには、デンプン(多糖類)が多く含まれています。

 

ケーキやチョコなどの甘いお菓子には、砂糖(二糖類)が多く含まれています。

 

「糖質」とは、『炭水化物から食物繊維を除いたもの』の総称です。

 

「糖類」とは、『単糖類・二糖類』の総称であり、『「糖質」から「多糖類・糖アルコールなど」を除いたもの』の総称とも言えます。

 

これらの食品に含まれる糖質は、身体の中に入ると、小腸で全て「ブドウ糖」という単糖類に分解され、血管の中に入って全身を巡ります。

 

血液の中に入ったブドウ糖のことを、「血糖」と呼び、血糖の量を測定した時の値を「血糖値」と呼びます。

 

「血糖値が高い」というのは、「血液中のブドウ糖が多い」という意味です。

 

【確認】

 

  • デンプンや砂糖は、体内で「ブドウ糖」になる。

  • 血糖(値)=血液中のブドウ糖(の量)

 

◆1-2 血糖値が高いと?

 

ご飯やパンを食べると、誰でも一旦は血糖値が急上昇します。

 

血糖値が高い状態が続くと、血管が内側から傷付けられたり、活性酸素が発生したりします。つまり身体によくないのです。

 

そこで、血糖値が上がると、すい臓から「インスリン」というホルモンが分泌されます。

 

インスリンは血糖を筋肉細胞に取り込ませてエネルギー源として利用し、余った分はグリコーゲンとして蓄えます。

 

また、インスリンは血糖を脂肪細胞に取り込ませて中性脂肪に変えて蓄えます。火事が起これば緊急出動する、消防隊員みたいなものですね。

 

現代の食生活では、1日3度「主食」と称してご飯や麺類を食べますし、また間食にスイーツやスナック菓子を食べ、砂糖入りのコーヒーや紅茶、清涼飲料水を飲む機会も多いです。

 

これらを口にする度に血糖値が急上昇し、インスリンの緊急出動(追加分泌)が起こります。

 

つまり、毎日食事の度に3回、間食をする人は5-6回も「血糖値急上昇→インスリンで鎮火」しているのです。

 

【確認】

 

  • デンプン、砂糖などを摂ると血糖値は急上昇

  • 高血糖は血管を傷付ける

  • インスリンは重要な「火消し」

 

◆1-3 高血糖→インスリン分泌の繰り返しが危険!

 

人間は、血糖値が極端に下がる「低血糖」に対しては、複数の防御機能を持っているのですが、高血糖に対応できるホルモンは、インスリンしかありません。

 

このたった1つの高血糖調整システムが弱ったり壊れたりすると、高血糖が治まらない状態、つまり糖尿病になります。

 

糖質たっぷりの食品を摂り続けると、その度にすい臓がインスリンを大量に出さなければならなくなります。

 

これが1日数度×365日×数十年間続くことによって徐々にすい臓が疲弊し、ンスリン分泌不足となっていきます。さらにインスリン(肥満ホルモン)の過剰分泌により肥満していくとインスリン抵抗性(インスリンの効き目が弱くなること)が生じます。

 

この二つが合わさってインスリン作用不足となり、糖尿病になると考えられます。

 

運動(身体活動)によっても高血糖はある程度コントロールできますので、食事だけが原因とは言えませんが、現代における糖質の頻回・過剰摂取とインスリンの頻回・過剰分泌が糖尿病増加の大きな要因であることは間違いないでしょう。

 

【確認】

 

  • 高糖質食品×摂取回数=すい臓の疲弊&糖尿病

 

◆1-4. 糖尿病とは

 

糖尿病とは、インスリン作用不足により、慢性的に血糖値が異常に高くなる状態のことです。

 

血糖値が高いからと言ってすぐに何かの症状が出るわけではありませんので、それ自体は病気ではなく単なる「状態」だと考えることもできます。

 

しかし、糖尿病(高血糖)を放置すると、次々と様々な病気が引き起こされます。

 

糖尿病を一言で言えば、「血管ボロボロ病」と言えるでしょう。

 

血中の高濃度グルコース(ブドウ糖)によって、数年~数十年かけて全身の血管が徐々に障害されてゆきます。

 

血管がボロボロになることによって、

 

・神経障害(痺れ、感覚の麻痺など)

・網膜症 (失明)

・腎症(人口透析)

・虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)

・脳梗塞

・閉塞性動脈硬化症(足の壊疽→切断)

 

等の深刻な合併症に加え、全身の血流・代謝が悪くなることにより、

 

・免疫障害→様々な感染症にかかりやすくなる

・皮膚障害→潰瘍など

・傷が治りにくくなる

 

などなど、全身のあらゆる部分に障害が及びます。まさに「病気のデパート」状態になるのです。

 

【確認】

 

  • 糖尿病を放置→血管がボロボロ→病気のデパート

  • 深刻な病気、死に至るケースも非常に多い

糖尿病の基本3 食後高血糖を起こすもの     

 

 

◆3-1. 食後高血糖の唯一の原因

 

食後高血糖とは、食事の後の血糖値が高いことを指します。

 

私達は日々、多様な食品を食べ、多くの栄養素を身体に摂り入れていますが、それらの中で食後高血糖を招く栄養素は一種類しかありません。

 

それは、「糖質」です。

 

既に見てきたように、「血糖」とは「血液中のブドウ糖」のことです。

 

食後、体内ですぐにブドウ糖に変換されるものは、糖質しかありません。

 

ハイカロリーな霜降り肉ステーキを1度に500g食べても、食後の血糖値は全く上がりません。

 

下の図1は「白米飯」と「焼き肉」を食べた後の血糖値の推移を比較したものですが、これを見ていただくと明らかです。

 

また、糖質の中でも「血糖になる糖質」と「血糖にならない糖質」があります。

 

では糖質とは何でしょうか?

 

◆3-2. 糖質とは

 

 「三大栄養素」という言葉をよく目にします。エネルギー量の大きな栄養素のことで、「脂肪」「タンパク質」「炭水化物」の3種のことです。

 

「糖質」とは、炭水化物に含まれるものです。

 

  • 炭水化物 = 糖質+食物繊維

 

だと覚えておけばよいでしょう。

 

このうち、食物繊維は血糖になりませんので、問題とはなりません。

 

糖質に分類される主なものは下記の3種です。

 

  • 単糖類、二糖類、多糖類(三糖類以上)

  • 糖アルコール: エリスリトール、キシリトール、マルチトール等

  • 合成甘味料: アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース等

 

糖質や糖類の話はかなり複雑ですが、普段の食生活においては下記のものに注意しておけばよいでしょう。

 

1. 糖質

 

  • 単糖類:ブドウ糖

  • 二糖類:ショ糖(砂糖)、乳糖

  • 多糖類:デンプン

 

「糖類」と表示されている場合は、「単糖類」と「二糖類」を指しています。

 

清涼飲料水に添加されている「ブドウ糖」、菓子や牛乳の「ショ糖・乳糖」、主食類(穀物)、根菜類に多く含まれる「デンプン」が血糖値の上昇を招くものです。また、多くの天然(由来)甘味料(ハチミツ、メープルシロップ、ココナッツシュガーなど)にも糖質が含まれており、血糖値を上昇させます。

 

2. 糖アルコール

 

エリスリトール以外の糖アルコールは砂糖(ショ糖)の半分程度血糖値を上昇させると言われています。

 

3. 合成甘味料

 

ブドウ糖に変換されないので、血糖値に影響を与えません。

 

【確認】

 

  • 食後高血糖を招くものは糖質のみ

 

  • 日常的によく食べられる糖質=ブドウ糖、砂糖、ハチミツ・シロップ類、デンプン

糖尿病の基本2 現行の糖尿病治療     

 

 

糖尿病で、既に合併症を起こしている人に対しては、それぞれに応じた治療を行いますが、「糖尿病そのもの」の治療は、血糖値をコントロールすることよって、合併症の発生を防止することが目的となっています。

 

「食事療法」、「運動療法」に加え、「薬物療法」が併用されるのが普通です。

 

糖尿病の治療に用いられている薬品は、下記のように非常にたくさんあります。

 

(1) 内服薬

 

・インスリン分泌促進薬(SU剤)
・α-GI薬(糖質の分解・吸収を阻害)

・速効型インスリン分泌促進剤

・ビグアナイド剤(糖新生の抑制)
・インスリン抵抗性改善薬(チアゾリジン)
・インクレチン関連薬(DPP-Ⅳ阻害薬)
・SLGT阻害薬

 

(2) 注射薬

 

・インスリン

・GLP-1受容体作動薬(ヒトGLP-1アナログ製剤)
 
驚くことに、内服薬7種類、注射薬2種類もあります。こんなにたくさんの薬が存在すること自体が、
現行の「カロリー制限・高糖質食」による治療が決して上手くいっていない証拠そのものと言えるでしょう。

 
ポイントは、ほとんどが「食後高血糖を防ぐ」薬であることです。
 
【確認】

 

  • 糖尿病治療の目的は、合併症の発症を防ぐこと。

  • その手段としては、「食後高血糖を防ぐこと」が主。

図1

糖尿病の基本4 日本の食事療法     

 

 

これまで、

 

  • 血糖値が異常に高くなり、その状態が続く → 糖尿病

  • 糖尿病を数年から十数年放置すると、深刻なものも含めて全身に様々な合併症が生じる

  • 食後の高血糖を招く栄養素は、糖質(炭水化物)のみ

  • 糖尿病そのものの治療に使われている医薬品は、全て血糖値を下げるためのもの

 

という点をお話ししてきました。

 

ここでは、糖尿病治療の一環として必ず指導される「食事療法」について見ていきます。

 

◆4-1. カロリー制限食

 

現在、日本の殆どの医療機関で唯一推奨されている食事療法は、「カロリー制限食」です。

 

カロリー制限食とは、「高糖質&低カロリー食」のことで、

 

  • 1日の摂取カロリー:男性: 1400~2000kcal / 女性: 1200~1800kcal

  • 脂質の摂取を控えてカロリーを抑え、摂取カロリーのうち55-60%は炭水化物(糖質)から摂るべき

 

というものです。

 

1400kcalで計算すれば、その6割は840kcal、糖質は4kcal/gですから、840÷4=210gもの糖質を毎日摂取すべきだと言うことです。

 

これを単純に1日3食で割ると、1回の食事で70gの糖質です。白米飯ですと190g程度になります。

 

二型糖尿病である江部医師(当会代表理事)の場合、糖質を1g摂取すると血糖値は3mg程度上昇します。空腹時血糖が110mgの場合、70×3+110=320mg/dlというとんでもない高血糖になってしまいます。

 

また、1日1400kcalというのはかなり低カロリーな食事で、現実には食べた気がしない程の簡素なものでしょう。

 

そこまでカロリーを抑えても、肝心の食後高血糖は全く防ぐことはできません。そこで医薬品の出番となるわけです。

 

◆4-2. カロリー制限食=マッチポンプ

 

つまり、現在主流となっている食事療法とは、

 

1. 糖質を大量摂取させて食後高血糖を起こさせ、

 

2. 医薬品で血糖値を下げる

 

という、まさに、自分でマッチで火をつけてはポンプで水を汲んで消す、「マッチポンプ」そのものなのです。

 

日本糖尿病学会が長年推奨し続けているカロリー制限指導ですが、当然のことながら合併症予防には殆ど効果を発揮していません。

 

  • 毎年糖尿病で亡くなる方:約一万四千人

  • 糖尿病性腎症で人工透析を受けている方:約十万人

  • 同じく毎年新たに透析を開始する方:約一万六千人

  • 糖尿病性網膜症で失明する方:年間約三千人

  • 壊疽により足を切断する方:年間約三千人

 

これが毎年毎年繰り返されてきましたし、現在も続いているのです。

 

◆4-3. 食事はバランスよく?

 

日本糖尿病学会は、

 

  • 「食事はバランスよく」

 

  • 「理想の栄養バランスは、炭水化物60%、タンパク質20%、脂質20%」

 

とガイドラインに書いていますので、これをこのまま指導する医師や栄養士がたくさんいます。

 

しかし、これには「全く科学的根拠がない」ということを知らない方が多いのが現状です。

 

「糖質制限食」に対しては「極端な食事」「偏った食生活」という批判が多いですが、ではなぜ

 

「炭水化物(糖質)6割が理想的なのか?」

 

「炭水化物(糖質)を摂らないといけない理由は何か?」

 

と言った質問に対しては誰も確証を持って応えることができないのです。

 

このような、一見もっともらしい「常識」に囚われないよう注意が必要です。

 

≫ 糖質制限食について 2へ

 

【糖質制限の適応外】

  • 診断基準を満たす膵炎がある方

  • 肝硬変がある方

  • 長鎖脂肪酸代謝異常症の方

【注意が必要な方】

  • 経口血糖降下剤の内服やインスリン注射をしている方

  • 機能性低血糖かつ糖質依存レベルの高い方

  • 糖尿病腎症第3期以降で、eGFRが60ml/分未満の方

ご注意下さい!

糖質制限食の第一人者

(C) 一般社団法人 日本糖質制限医療推進協会 2015