糖質制限食について 2

 

 

糖質制限食の基本と実際

1. 糖質制限食の基本     

 

 

◆1-1. 糖質制限食の考え方

 

糖質制限食について 1」で見てきたように、

 

  • 食後高血糖を招くのは「糖質」のみ

  • 高糖質カロリー制限食では食後高血糖は防げない→合併症予防は不可

 

です。

 

これらの単純な二つの事実から当然に得られる結論は、

 

「高血糖を防ぐためには、糖質摂取を控えればよい」

 

となります。これがシンプルな「糖質制限食」の考え方です。

 

  • 糖質を多く摂らない

 

  • 食後高血糖は生じない

 

  • 疲弊したすい臓に鞭打つことはない&血管にダメージが残らない

 

  • 糖尿病の進行、合併症発症は予防できる

 

◆1-2. 糖質制限食のイメージ

 

糖質制限食とはどのようなものか、おおまかなイメージを捉えてみましょう。※具体的な実践方法は「学びの部屋」をご覧下さい。

 

例えば下記のような定食があるとします。

 

  • ご飯

  • わかめと豆腐のみそ汁

  • 漬け物(たくあん、白菜ぬか漬け)

  • 小芋煮

  • 鶏から揚げ

  • サラダ(キュウリ、レタス等+ポテトサラダ)

 

この中から、糖質の多いものを探しますと、

 

  • ご飯

  • たくあん

  • 小芋煮

  • ポテトサラダ

 

です。これらは食べないかごく少量だけ食べることにして、から揚げ、みそ汁、葉菜類を食べるのが糖質制限食です。

 

人によってはこれだけでは物足りなかったり、摂取エネルギーが不足してしまう場合があります。その場合は他にもう一品付け加えることになります。

 

つまり、

 

「普段の食生活から、『糖質が多いもの』だけを抜く」

 

が糖質制限食です。

 

糖質以外については、多様な食品から必要な栄養を摂る食事方法です。脂質とタンパク質(肉、魚貝、卵、チーズ、大豆製品など)をしっかり食べますが、葉野菜や海藻や茸なども摂取するので食物繊維、ビタミン、ミネラル、微量元素が不足することもありません。

 

「肉ばかり食べる」「好きなものだけ食べる」というものではありません。

 

 

◆1-3. 糖質を抜いても大丈夫?

 

これまでご飯やパンを「主食」としてきた現代の日本人の多くにとっては、主食(つまり糖質)を抜いても大丈夫なのか?という疑問が湧くと思います。

 

結論から言えば、「全く問題ありません」。

 

なぜなら、「三大栄養素」のうち、ヒトにとっての必須栄養素は「脂質」と「タンパク質」であって、「炭水化物(糖質)」はそうではないからです。必須脂肪酸、必須アミノ酸はありますが、必須糖質はありません。

 

確かにブドウ糖は人体(特に赤血球)に必要なエネルギー源ですが、ヒトは必要な量のブドウ糖を体内で合成することができるので、外部から摂取する必要はないのです。

 

脂質・タンパク質・炭水化物(糖質)を「三大栄養素」と呼ぶ日本独特の表現が誤解を招いているかもしれません。「三大栄養素」は英語ではmajor nutrientsと言います。「エネルギー量の大きな栄養素」という意味です。単純に「大きな栄養素」と考えればよいでしょう。

 

対して、ビタミンやミネラルなどエネルギー量の小さいものは、micro nutrientsと言います。エネルギー量が少ない、「小さな栄養素」です。

 

そしてこのエネルギーの大小と、必須栄養素がどうかは別の話なのです。

 

 

2. 糖質制限食の実際     

 

これまでに見てきたように、

 

  • 糖質さえ摂らなければ、食後高血糖は起こらない

  • ヒトにとって糖質は必須栄養素ではない→食べる必要がない

 

です。

 

こちらを踏まえて、糖質制限食の実際について見ていきましょう。

 

◆2-1. どの程度糖質を制限するのか

 

以下の二つの側面で捉える必要があります。

 

(1) 食事1回あたりの糖質摂取量

 

(2) 1日あたりの糖質摂取回数

 

(1)については、「1回あたりの糖質摂取量は10-20g以下」が私どもの提唱する糖質制限食の規準となります。糖尿人の大多数を占める二型糖尿病患者の場合、食後血糖値を良好なコントロール範囲内に収められる量だからです。

 

(2)については、実践者それぞれの嗜好やライフスタイルに合わせ、次の三つのパターンで対応します。

 

(2)-1. プチ糖質制限食

 

朝、昼は糖質を適量(できれば少量)摂取して、夜だけ糖質を摂らない方法です。最もハードルが低い方法で、続けるのも簡単です。軽いダイエットや、ダイエット後の体重維持には向いていますが、糖尿人の合併症予防効果はあまり期待できません。

 

(2)-2. スタンダード糖質制限食

 

一日三食食べる人でしたら、その内二食(特に朝と夜)を糖質抜き、昼は糖質を適量(できれば少量)摂取する方法です。お勤めの方は、昼食を外食やコンビニで済ます機会が多いと思います。ランチで糖質制限をするのはなかなか難しいですから、このパターンを採用してみるとよいでしょう。

 

(2)-3. スーパー糖質制限食

 

一日の食事全てを糖質カットします。糖質制限食の効果が最も大きくなります。江部医師(当会代表理事)も、自身が糖尿病であることが発覚して以来の足かけ十四年間、スーパー糖質制限食を続けています。

 

 

◆2-2. 何を食べればよいのか

 

基本的には、糖質量に注意すれば、何を食べてもいいと言えばいいのです。

 

例えば白米飯、パスタ、ケーキ等は糖質が多い食べ物ですが、一口だけ食べるのでしたら身体に入る糖質量は少ないので殆ど影響はありません。

 

しかし、糖質の多い食品は「美味しい」と感じさせるものが多く、少量で済ませることが難しい場合も多いでしょう。

 

ですので、糖質の少ない順に、

 

  • 摂取量をあまり気にしなくてよい食品(OK食品)

  • 食べすぎ注意(要注意食品)

  • できれば食べない方がよい(NG食品)

 

に分けて考え、それぞれの体調や好み、生活スタイルに合わせて適宜調整すればよいでしょう。

 

ここでは簡単な例を示しておきます。あくまでも「糖質量」に着目した分類となります。油脂類や甘味料については別途注意が必要な食品もあります。

 

1. OK食品

 

殆ど糖質を含まないか、少量含むが日常的に大量に摂取することがないもの

 

  • 動物性食品: 畜肉、獣肉、魚介類、チーズ、卵

  • 植物性食品: 葉菜類、大豆(製品)、ナッツ類、こんにゃく、海藻、キノコ

  • 調味料など: 塩、醤油、味噌、マヨネーズ(無糖)、エリスリトール(甘味料)など

  • 油脂類: 全て可

  • 飲料: 水、無糖の茶(各種)、コーヒー、炭酸水など

  • アルコール飲料: 蒸留酒(焼酎、ウィスキー、ブランデー、ウオッカなど)、ワイン(甘くないもの)、糖質ゼロ発泡酒など

 

2. 要注意食品

 

糖質量はあまり多くないものの、人によっては大量摂取してしまいがちなもの

 

  • 動物性食品: 砂糖やブドウ糖が添加された加工品(練り物、煮物、一部のハム・ソーセージなど)、ヨーグルト、牛乳

  • 植物性食品: 根菜類

  • 調味料など: 酢、みりん

  • アルコール飲料:日本酒(純米酒は100ml中5gの糖質量)

 

3. NG食品

 

糖質量が多く、摂取しないかごく少量摂取に止めておくべきもの

 

  • 植物性食品: 穀類(米、麦、トウモロコシなど)、デンプン含有食品(葛、春雨など)、芋類、カボチャなど

  • 調味料: 砂糖、ハチミツ、水飴またはこれらを多く含むもの(焼き肉用など各種のたれ、各種ソース類、ドレッシング、ケチャップなど)

  • 乾燥食品: ドライフルーツ、海藻類(乾燥昆布をそのまま食べる場合)など

  • 飲料: 砂糖、ブドウ糖が添加された全ての飲料(炭酸飲料、スポーツドリンク、缶コーヒー、乳酸菌飲料、甘いアルコール飲料など)

  • アルコール飲料:ビール(大量に飲めるので危険性が高い)

 

 

◆2-3. 好きなだけ食べてよい?

 

糖質制限食に関するよくある誤解の一つに、「糖質さえ制限すれば、好きなものを好きなだけ食べてもよい」というものがあります。これは正しいのでしょうか?

 

正しいとも言えますし、正しくないとも言えます。つまり、「人による」のです。

 

例えば、一般的な無糖ヨーグルトは重量比でおよそ5%の糖質を含み、低糖質食品と言えます。

 

ヨーグルト100gを食べると糖質量は5gです。

 

200g食べても糖質量は10gです。

 

しかし500gを1度に食べると25gの糖質摂取となります。

 

1度の食事でヨーグルト500gだけを食べるのであれば、糖質量だけを考えればかろうじてセーフかもしれませんが、ヨーグルトだけでは補えない栄養素もあります。たまにならいいかもしれませんが、このような食生活は推奨できるものではありません。

 

重要なポイントは、「糖質制限食」は「糖質の摂取量を抑える」だけのものであるという点です。

 

脂質・タンパク質、各種微量栄養素は、様々な食品から満遍なく摂るべきです。決して「肉だけ食べていればよい」「卵だけ食べていればよい」というものではありません。

 

「糖質制限食は、食後高血糖を招く糖質だけを制限し、その他のあらゆるものを食べる」

 

ものであり、偏食(特定の食材や食品群のみを摂取する)とは対極にあります。

 

 

【糖質制限の適応外】

  • 診断基準を満たす膵炎がある方

  • 肝硬変がある方

  • 長鎖脂肪酸代謝異常症の方

【注意が必要な方】

  • 経口血糖降下剤の内服やインスリン注射をしている方

  • 機能性低血糖かつ糖質依存レベルの高い方

  • 糖尿病腎症第3期以降で、eGFRが60ml/分未満の方

ご注意下さい!

糖質制限食の第一人者

(C) 一般社団法人 日本糖質制限医療推進協会 2015